怒りがおさまらないHSPに試してほしいセルフコントロール術8選
ここからは、おさまらない怒りをなんとかしたい!というHSPの方向けに、私が普段実践しているやり方で、怒りを正しく受け止め、感情と上手に付き合うための方法8点を解説します。
- 怒りの下にある気持ちを考える
- 感情に名前をつけてみる
- 自分の価値観や望みに耳を傾ける
- 他人への期待値をゆるく下げる
- 自分への期待を高くしない
- 怒りと距離を置く習慣をつくる
- 必要に応じて相手に気持ちを伝えてみる
- 怒りを「頑張るエネルギー」に変換する
怒りの下にある気持ちを考える

怒りは氷山の一角で、その下には沢山の感情が沈んでいると言われています。
この理論は「アンガー・アイスバーグ理論」といい、怒りの背景には不安や悲しみ、孤独感や無力感といった別の感情が隠れているという考え方です。
- 頑張りを評価してほしかったのに、大した事ないと言われたから怒った
- 自分は余裕を持って行動しているのに、後輩が遅刻してきたから怒った
- 人に親切にすべきと感じているのに、不親切な人がいて怒りを感じた
「〇〇してほしかった」「〇〇すべき」の部分が、怒りの下に隠れている感情や大切にしている価値観です。
怒る人は自分の「こうしてほしい」「こうあるべき」がその通りにならないと怒りを感じます。
仕事の中でも、原因がないのに、ただ怒っている人はまずいませんよね。
まずはなぜ怒りを感じたかについて考えることで、複雑に絡んだ感情をていねいに紐解いていきましょう。
「そう言われても、具体的にどうやったらいいか分からないよ~!」
と感じる方向けに、怒りの感情棚卸し表を用意しました。
感じたことを一つずつ見える化して整理することで、本当の自分の気持ちに気づきやすくなります。
この表は、
| いつ |
| どこで |
| 誰に |
| 何を言われて怒った・イライラしたか |
| 怒りを感じたときの状況 |
| 不満だと思ったこと |
| 怒りの他に感じたこと |
| 自分が大事にする価値観 |
| 相手にどうしてほしいか |
| 自分はどうしたいか |
を記入し、感情の棚卸しをするアイテムです。

まずは書ける部分だけ埋めてみましょう♪
紙やメモ帳があればすぐできますので、今怒りを感じてモヤモヤしている方は、ぜひ書いてみてくださいね。
| いつ:木曜日の午後3時ごろ |
| どこで:事務所のデスクで |
| 誰に:上司に |
| 何を言われて怒った:「そんなの誰でもできるよ。時間かけすぎじゃない?」と言われて怒った。 |
| 怒りを感じたときの状況:ミスをしないよう丁寧に作業していたとき。自分なりに集中して取り組んでいた最中に、急かすような言葉をかけられた。 |
| 不満だと思ったこと:仕事に丁寧に取り組む姿勢を軽く見られたように感じた。自分の努力や誠実さを理解してもらえなかった。 |
| 怒りの他に感じたこと:悲しみ、虚しさ、焦り、「私は遅いのかな」という不安、認めてもらえない孤独感。 |
| 自分が大事にする価値観:丁寧さ、誠実さ、相手を思いやる仕事の進め方、信頼関係。 |
| 相手にどうしてほしいか:「ありがとう、丁寧にやってくれて助かる」と一言でも認めてほしかった。急かすより、少し気持ちを汲んで声をかけてほしかった。 |
| 自分はどうしたいか:相手のペースに無理に合わせすぎず、自分のやり方を大切にしたい。必要なときは「もう少し確認してから提出します」と伝えて、自分の安心できるペースを守りたい。 |
記入が大体できたら、次のステップに進みます。

今はまだ全部書かなくても大丈夫ですよ!
感情に名前をつけてみる

感情の棚卸しシートが書けたら、その時感じた感情に名前をつけてみましょう。
これは「感情のラベリング」と言われています。
悲しみや怒りなどの負の感情を手放す方法に「感情のラベリング」があります。感情のラベリングは自分の中のネガティブな感情を外に出すこと、すなわちアウトプットすることでストレスが軽減されるというものです。
出典:PASONA「語彙力アップでストレス軽減:感情のラベリングの力」
自分のモヤモヤした気持ちを言語化してハッキリ認識するために、その時の感情に合う言葉を探しましょう。
言語化の工程がうまくできると、自分の気持ちを整理しやすくなるだけでなく、相手に話をするときも、クリアに伝えることができますよ。
感情表現の語彙が増えると、自身の気持ちや困り感を他者に伝えることがしやすくなります。
出典:オレンジスクール「気持ちの言葉を増やそう!~感情のラベリング~」
このとき浮かんだ名前は、ぜひメモなどに保存しておき、感情の選択肢リストとして後から見直せるようにしておいてください。
なぜかというと、自分で一から感情に名前をつけるよりも、すでにある選択肢からあてはまる感情を選ぶ方が、不快度や覚醒度が低下し、認知的負荷(頭への負担)も低くなることが研究で言及されているんです。
感情のラベリングを行う際に,自分自身で、ラベルを生成するよりも選択肢
をもとに感情をラベリングした方が,画像による不快度や覚醒度が低下した。」「感情ラベルを選択肢から選ぶことで,自身の感情状態との距離化が生じ,不快度,覚醒度が小さくなる可能性が示唆された。
出典:感情のラベリングの方法の違いが 感情変化や認知的負荷に及ぼす影響の検討(北畢加純、高橋知音 )
自力で考えるより、リストにある選択肢から選ぶ方が、感情と少し距離を置いて自分を客観視でき、ネガティブな感情を感じにくくなるんですね!
最初のうちは、以下のリストの中から自分に合いそうな感情を選んでみてください。
| 焦り | 不安 | 悲しみ |
| 心配 | 嫉妬 | 失望 |
| 呆れ | 腹立たしさ | 寂しさ |
| 後悔 | 罪悪感 | 憎しみ |
慣れてきたら自分なりの選択肢を増やし、リストをカスタマイズしていきましょう。
棚卸しシートがうまく書けなかった方は、上のリストを参考にして追記してもOKです!
繰り返すうちに、より近いニュアンスの言葉をすっと選べるようになります。
この練習は、仕事でも同僚や上司などに自分の気持ちを伝える際にも役立ちます。
自分の感情がうまく言語化できない方は、このトレーニングを継続してみてくださいね。
自分の価値観や望みに耳を傾ける

次は
この2つに注目してみましょう。
たとえば、職場で怒りのきっかけになった言葉や行動の裏に、
「わかってほしかった」「認めてほしかった」というような願いや価値観が見えてくることがあります。
と責める代わりに、
と気づくことができたら、少し気持ちがやわらぐかもしれません。
もっと掘り下げて考えたい方は、こちらのワークに取り組んでみましょう。
- あのとき、本当はどうしてほしかった?
- どんなふうに扱われたら安心できた?
- なぜ、それをされたorされなかったことがイヤだった?
- 自分の中に、「こうされるべき」「こうあってほしい」と強く信じていたことはある?
- それは、いつから大切にしてきた価値観だと思う?
- その価値観は、あなたにとってどんな意味を持つ?
- 本当は、どんなふうにわかってもらいたかった?
- もし言葉にできるなら、自分の本音をどんなふうに伝えたい?
- これから自分にできる、小さな一歩はどんなこと?
ここまでできたら、かなり具体的に感情を形にできています!
怒りがおさまらなかった最初の自分と比べて、少し気持ちが冷静になってきたのではないでしょうか?
必要に応じて相手に気持ちを伝えてみる

感情の棚卸しをした際、
を書きました。
ともに頑張る仕事の同期メンバー、信頼している先輩など、あなたが今後も関係を大切にしたい人がいるとしたら、これら2つをもとに、相手に自分の要望を伝えてみるのもいいですね。
「自分の中で感情を消化できたから、今は相手に伝えなくてもいい」という選択をした方は、この項目は飛ばしてOKです。
なんでも全て相手に話せば良いということではありませんから、心配しなくて大丈夫ですよ。
相手に気持ちを伝える際は、怒りそのものを伝えるのではなく、怒りの氷山の下に隠れている感情を思い出してみてください。
自分はどう感じたのか、そして相手に何をしてほしいのかをできるだけ明確に説明するようにしましょう。
感情的になるとただの喧嘩や言い合いになり、その先がうまく伝わらない可能性があるので、注意が必要です。

相手は「怒られた」ことしか記憶にないパターンも…。
私の場合は、こんな感じで伝えてみたことがあります。
もし仕事が大きく遅れそうだと思ったら、無理せず早めに言ってもらえると助かります。
ヘルプが出たら他のメンバーもカバーしますし、チーム全体で仕事がうまく回ると思うんです。困っているときはお互い様なので、〇〇さんも気軽に相談してくれると私たちも嬉しいです。
もし相手が改善してくれたら、自分や相手にとってどんな良い効果があるかもセットで伝えると、相手も聞き入れやすいはずです。
相手のことが大事だという気持ちや、より良い関係を築くために話しているということが伝われば、お互い前向きな話し合いができると思います。
職場で明らかに自分に敵意を向けてくるような、「自分にとって大切じゃない人」に対しても、基本は感情的にならず、落ち着いて話をするよう意識しましょう。
これを伝えることが大事ですが、相手に歩み寄りの意思がなさそうであれば、
という選択をしたほうが、HSPは余計な消耗を防ぐことができます。
他人への期待値をゆるく下げる

職場でも、人はそれぞれ自分の価値観をベースに動いていますから、すべて誰かの価値観通りというわけにはいきません。
- 同僚はきっと優しくしてくれるはず
- 遅れるなら連絡するのが当たり前
- 先輩は私が困ったとき力になってくれそう
私は以前こんな期待を他人に対して抱いていたことがあります。
それが破られたとき、すごくショックだったり、怒りを感じたり、期待してしまった自分自身にイライラしたこともありました。
でも、相手には相手の価値や都合があります。
- そのとき忙しくて気持ちや時間に余裕がなかった
- その人なりの大変な事情があった
- 自分の思い描いていた価値観や人物像とそもそもズレがあった
私は勝手に期待して、勝手に失望して怒りを感じていました。
- 自分の至らない部分は相手がカバーしてくれるだろう
- 私が親切にしている相手は、私にも同じように親切にしてくれるだろう
- 仲が良い相手だから、私の価値観に沿って行動してくれるだろう
といった、まったく都合の良い身勝手な期待が含まれていたと思います。
相手は私のために生きているわけではありませんし、それぞれ目的や大事にしたいこと、大事にしなくても良いことは異なります。
- 私はこういう考えだけど、違う認識の人もいるよね
- 基本的に優しい上司だって、余裕がない時は優しくなれない
- 100%全てにおいて気が合う人はいない
- 何を大切にするかは人それぞれ違うんだ
- 同じ仕事をしていても、同じ方向を向いているとは限らない
こう考えるようになってから、過度に期待を持つことは減りました。
そして、相手に期待しすぎないことで、価値観のズレから怒りが生まれることも少なくなったように感じます。
自分への期待を高く見積もらない

HSPには完璧を目指そうとする傾向が見られ、仕事でも「こうあるべき」「あらねばならない」という自分ルールを作っていることがあります。
HSPは行動のルールを自分に課すと同時に、自分自身がどうあるべきかについて、高い基準を設ける傾向があります。
(中略)
もしかして、「あらゆることにおいて完璧でなくてはならない」というルールを設けていないでしょうか。そして、あらゆることに完璧でなければ自分で納得できなくなっていないでしょうか。出典:鈍感な世界に生きる敏感な人たち(イルセ・サン著)
HSP気質の方は、常に完璧であろうとする傾向があります。「こうあるべき」という理想の自分像を造り上げ、期待通りに行動できないと「自分はダメな人間なのだ」と自己否定に走ってしまいます。
出典:ひだまりこころクリニック金山院「HSP気質の方の特徴と抱える悩み」
ほどほどでOKを出すのが難しいため、理想と現実の差に苦しみ、自分に対して「もっと仕事ができるはずなのに!」と怒りを感じやすくなります。
HSPにとって完璧主義をやめることはとても難しいことです。
それでも、少しずつ自分へのハードルを下げていけると、生きるのがだんだんラクになってくるのを感じます。
すべてを手放せなくても、100あった基準を80に下げるだけで心の苦しさがかなり変わります。
怒りと距離を置くための習慣をつくる

私は自分の感情の棚卸しを行い、怒りの原因がはっきりした後は、自分の部屋で本を読んだり、ゲームをしたりします。
これは怒りの気持ちの整理は終わったよ、もう繰り返し思い出さなくていいよ、と自分に合図を送る習慣のようなものです。
普段から仕事でも反すう思考が多いので、自宅では怒りを感じた出来事から意識を逸らして、気持ちを切り替える意味も込めています。
読書やゲーム以外でも、何をするかは自分の好きな行動を選んでOKです。
- シャワーを浴びる
- アイスを食べる
- 散歩に行く
- 一旦寝る
ネガティブなイメージが浮かびにくい、落ち着ける行動をとってみましょう。
ただ、感情の棚卸しをしないうちに別のことをしようとしても、処理しきれていない気持ちが残っていると、怒りや不安として何度も浮かび上がってきます。
一時的にやり過ごすためにはいいかもしれませんが、自分の怒りの下にある気持ちに向き合う時間は取るようにしてくださいね。
怒りを「仕事を頑張るエネルギー」に変換する

ここまでは怒りを整理して自分の欲求に気づき、相手に伝えるまでのプロセスを説明しましたが、怒りは頑張るためのエネルギーとしても使えます。
悔しさや不甲斐なさからくる怒りをバネにして何かを成し遂げるといったように、怒りは目的に向かって行動するきっかけにもなります。
出典:リクナビNEXTジャーナル「え、なんでそんなにご立腹!?怒りに振り回されやすい人の特徴」
- 仕事で失敗した悔しさがあり、資格勉強に全力で取り組んだ
- 失恋してしまい、仕事の努力で悲しさを打ち消した
- 会社に対する満たされない気持ちを音楽活動で発散する
こういった怒りや悔しさ、悲しさなどの感情を、仕事や勉強、創作活動などに向けるという経験はないでしょうか。
心理学者のフロイトは、これを防衛機能の一つである「昇華(しょうか)」と名付けました。
心理学における「昇華」は、社会的に受け入れられない、あるいは個人的には満たされない衝動や欲求、感情などを、より社会的に価値のある、創造的かつ建設的な活動や目標へと無意識のうちに転換する防衛機制と定義されます。
出典:まめクリニック「昇華とは?物理と心理学、それぞれの意味をわかりやすく解説」
ちょっと上の説明だけだとわかりにくいかもしれないので、私自身の体験を交えて書いてみます。

無事合格できた時は怒りが吹っ飛びました(笑)
怒りは悪いことだから消さなきゃ!
と思うより、
と考えることで、怒りは必ずしも悪いことではないと考えられるはずです。
確かに怒っている間は定期的にイライラしたりすることもありました。
ですが、他人や自分を傷つけるなど、無意味な破壊活動をしたり、何の成長もできない時間を過ごすより、よっぽど有効に怒りエネルギーを使えているかも!と感じたことは確かです。
そして何より、何かを頑張った成果や成長の証が手に入ることで、チャレンジしてよかったなと前向きに捉えることができました。
さいごに|HSPが怒りを味方につけて生きるという選択肢

怒りがおさまらない根っこには、自分の大切にしたい気持ちに蓋をして、我慢していたという原因が隠れていました。
HSPであっても、怒りは人間に備わった重要な感情です。
怒りはときに人を傷つけることもありますが、正しく向き合うことで、あなたを守り、成長する力にもなってくれます。
怒りの下に隠れている本当の気持ちに気づくことができたら、きっと心が軽くなる瞬間が訪れるはずです。
当ブログでは、他にもHSPさん向けに仕事のお役立ち情報を公開しています。気になる記事があればぜひどうぞ!
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